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伊坂幸太郎『終末のフール』

昨日の持ち歩き本は、伊坂幸太郎の『終末のフール』。
武道館で連れを待っている間、席で読んでいました。

『終末のフール』も、『死神の精度』や『ラッシュライフ』と同じように、群像劇。
隕石があと三年で地球に衝突して、人類が滅亡するとわかった状態での、仙台のある町に住む人々を書いています。

程度の差はあれ、人はみんな弱くて醜い部分を持っている。生きるってことはきれいごとじゃすまない。でも、それぞれみっともない部分がどんなにあっても、今一生懸命生きることはできるんじゃないの、幸せにもなれるんじゃないの、というメッセージを感じました。

この作品も章ごとに味わいがあります。しかし、群を抜いて光っていたのが、「鋼鉄のウール」という章。作者の気持(気合)が入っているのが伝わってきて、全体の中では浮いていると言ってもいいくらい(笑)。でもとってもいいんです。

この章では、終末が来ても、淡々と練習を続ける苗場というキックボクサーを、彼にあこがれる「ぼく」が憧れをもって話しているスタイルで書かれています。

「苗場君は結局、ローキックと左フックしかできないんだよね」と言うインタビュアーには
「ローキックと左フックができて、それと、客を夢中にさせられれば、他に何がいるんですか」

明日死ぬとしても、今日はローキックと左フックの練習をするという苗場。
「明日死ぬとしたら、生き方が変るんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

ストレートすぎるくらいの言葉ですが、「ぼく」の目を通して、作中では心に響く言葉になっています。そして「おい俺、俺はこんな俺を許すのか?」という言葉。

家庭を崩壊させそうになった瞬間、「ぼく」が思い出す苗場の言葉です。ここだけ切り取ると臭くなっちゃうような言葉なんですが、自分の弱い部分に自分が言い聞かせる、いい言葉なんだなあ。

こんな風に書くと、ストイックな硬い読み物と誤解されるかもしれません。でも実は、伊坂さんの作風は「軽さ」がいい味を出しています。読みながら、思わず笑ってしまうような、脱力系の会話や表現があって読み手を疲れさせません。たとえば、

「超越してる感じだ。おまえは超人だ」
「あ、それ読みましたよ、超人」
「キン肉マンか」
「何です、それ。ニーチェですよ」

とこんな感じ。

私達の世代以降って、重くなりきれないのかもしれないな。なんて思うこともあります(むちゃくちゃ重くて暗い本・音楽・映画も実は好きなんですけど)。

人気作家では、東野圭吾さんの小説もすごく面白くて次々読んでますが、東野さんは現実に近くにいても友達にはなりたくないタイプだろうなと思ったりするんです(← 私、あまりに図々しいですね・・・というか「先方がお断りだってさ!」って感じですね(^^)ゞ)。でも、伊坂さんは近くにいたら、話したい、友達になりたいと思えるタイプなんじゃないかと勝手に想像しています。
まあ、どちらが「作家さん」への褒め言葉になるのかはわかりませんが(笑)。

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コメント

こんにちは。あちこちお邪魔してすみません。
伊坂さんのお話があったのでつい……(笑)。
私も『終末のフール』の中では、「鋼鉄のウール」が一押しなんですよ。ぼくてきさんもお好きだと書いていて下さったので、嬉しかったです。

投稿: yumemi | 2006年11月22日 (水) 22時20分

ありがとうございます。すぐコメントいただけてうれしいです。
「鋼鉄のウール」は、どうしても書きたかったので『終末のフール』の中に入れちゃった・・という感じもしましたが、いいですよね。あの章があるからこそ全体が引き締まってるとも言えるし、ちょっと異色とも言えるし(笑)。

全然違うんですが、全体の中の部分という意味では、チャップリンの『独裁者』の最後の演説部分を思い出しました。
映画の流れからすると作品を壊しかねないほど浮いていて、でもあれがあるからこそ力のある作品だという点で。

投稿: ぼくてき | 2006年11月22日 (水) 22時40分

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