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徳川家の末裔、方言の先生の思い出。

前のブログでうんぎゃるまつさんと岡山方言の話をして。
大学の時、阪大から来て方言の講義をされた先生を思い出した。

大学一年の時だったと思う。
夏休みも近いある時、一週間程の短期集中講義の張り紙が掲示された。

「特別短期集中講義 『方言地理学』 大阪大学 徳川宗賢先生」。

専門とは関係なかった。それでも、一緒にとろう、と強く誘ってきたのは、九州出身で同じ専攻だった当時の友人。

「方言地理学?関係ないし、大体、とってる講義と重なってるし」と断ったら、
「あんたバカねー。」と怒られた(「バカねー」は低高低の発音。)
「徳川って、江戸幕府の徳川ねー(徳川ぞー。だったかな)。徳川家の末裔ねー。生きてる歴史よー、見んでええの?江戸時代が続いっとったら、殿様ぞー(注:ああ、熊本弁と鹿児島弁が混ざった友人の言葉の記憶が、私の中ですっかり薄れてます)」
「え?そうなの?」

行動力のある友人は、学生課だったか何かに掛け合い、少しくらいなら自分のとっている講義とかち合っても(どちらか休んで)いい、というお許しを得てくれた。

徳川宗賢先生は、本当に徳川家の、確か直系の末裔だという話だった。物静かな語り口。そこはかとない大人のエスプリと余裕と頭の回転の速さを感じた気がする。ほっそりして、ちょっとスノッブな感じもあった。でも、それが板についているというのか、まるで厭味に感じられない人徳があったようにも思う。

「この大学の学生は出席がいいですねー。驚きました。でも私にいわせると、出席がよくて成績がいいのは当たりまえ、出席がいいだけで成績が悪いのはサイテー、全く出ないけどすごく出来るならそれがサイコーだと思うんですが。」

「先生」という人種がこんなことを言うのは初めて聞いたので、これはかなり受けた。そうだそうだ。サボってたって、出来ればいいわけよー。先生、わかってらっしゃる。なんて思ったかも。

「私は徳川の人間で東京なんですが、何の縁だか大阪にずっといます。今では慣れましたが、行った当時は言葉も文化も違うので驚きました。だいたい、彼らはサントリーの「だるま」のことを「たぬき」というんです。」

様々な地域から学生が来ていたけど、なぜか関西人はあまりいなかったので、当時これは初耳だった。「だるま」を「たぬき」とは!関西恐るべし(何が?)。

「あと、気をつけなくちゃいけないのが「考えときまっさ」という表現です。これが「お断りです」という意味だとわからず、人のいい東京人はいつ結論がでるのかと待ち続けて関西人にバカにされるのです。」
おおおー、そうなんだ!関西恐るべし。(注:これはよく外国人が、「日本人が「今度ね」と言ったら、もう二度とないよ、という意味だね?」なんていうのと同じで、実際は言葉どおり「考えておく」意味の時もあるのかも?でも当時は単純に「関西恐るべし!」と思ったのです。)

講義は「方言地理学」だったので、もちろん、こんなヨタ話ばかりではなかった。
「方言を単語レベルで調べてみると、糸魚川が重要な意味をもっているのです。」なんていう話を、調査した言葉の分布図で説明してくださった。
地形が方言の境界に深く関わっていると言う話は、言われてみればもっともだが新鮮だった。事実を集めて要因を分析する・・・へえ、研究って、推理ドラマみたいで面白いんだなあ。

一週間目。講義が終わり、学生の拍手。
私がそのまま教室を出ようすると、九州の友人に再び怒られた。

「あんたバカね!」
「?」
「サインもらわんとね!」

そうか!徳川家の殿様だもんね。
授業で使った黄色い御著書。その裏表紙に、サインを頂いた。握手していただいたかどうかは忘れた(笑)。しばらく数人の学生で取り囲んで、別れを惜しんだような記憶がある。

何年か前、新聞で訃報に接した。寂しい気持ちになった。
一週間だけなのに、本当に印象的な授業、印象的な方だったなあ。
天国の徳川宗賢先生、その節はありがとうございました。

(追記: 文中の、「確か直系の」という表現は、徳川の血筋を語る言葉としてはあまりにもバカっぽいので(爆)調べてみました。田安徳川家(御三卿のひとつ)の九代目の御当主でいらしたそうです。田安徳川家の一代目は、八代将軍吉宗公の次男宗武なので、遺伝的には直系でいいのかな^^;)

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「教育」カテゴリの記事

コメント

方言つながりで、おもしろい話
ありがとうございます(^^)

ウチは両親が長い間、大阪&兵庫に住んでいたのと
現在同居中の義兄がバリバリの神戸人なのとで
変な関西なまりの岡山弁なんです(苦笑)
でも、以前の職場でおっちゃん達に
鍛えられたおかげで
かなり高度な岡山弁が理解できます(^^)v

でも、関西弁ってのは
どうしてすぐ感染してしまうんじゃろ(笑)?

投稿: うんぎゃるまつ | 2006年10月21日 (土) 13時54分

レス遅れて済みません。

自分の地域の言葉以外は、ニュアンスわかりずらいですよね。~はる、っていうのが敬語だというのも、教えてもらうまでわからなかったです。いろいろなお国言葉、それぞれ味があって面白いです。

ところで今日お台場に行ったら、トライアスロンの大会やっていました。日本科学未来館に行く途中の10時頃、女子選手が自転車でちょうど目の前を通ったんです。うんぎゃるまつさんを思い出して「がんばれー」って声かけちゃいました(^^)。

投稿: ぼくてき | 2006年10月22日 (日) 21時28分

はじめまして。ときどき見させていただいてます。
ぼくてきさんは、とってもオトナなかんじで知的は女性だなあといつも思っています。でも、押尾さんのことになるとワクワク感いっぱいになるのが、とっても可愛いですね。
さて、私は大阪人ですが、友人に「関西弁は、~はる、をつけると何でも敬語になっていいねと言われたことがあります。
例:食べる(召し上がる)→食べはる
  居る(おられる)→いてはる
  知っていますか(ご存知ですか)→知ってはりますか

他の言い方を知らなくても、それなりに敬語になりますね(笑)。

投稿: チャッピー | 2006年10月23日 (月) 22時17分

チャッピーさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
オトナなかんじに見える?のは、残念ながらブログの中だけかもしれません(笑)押尾さんのギターは本当にいいんですよー。

標準語以外の言葉には、標準語に訳し切れない言葉がいろいろあって、興味が尽きません。
なるほど、「~はる」って便利ですね(^^)

投稿: ぼくてき | 2006年10月24日 (火) 01時21分

先日、「はじめにきよし」さんの定期演奏会に行ってきました。

途中でハヂメさんが、ゲストの押尾さんを「押尾コータローさんです!」と紹介したら、一番前の子供が「変な名前~」と言いました(笑)。
押尾さんは「小学校のときは、”お塩、買うたろう”なんて文章みたいな名前だから、からかわれたんだよ」って答えてました。関西ならではの突っ込みでしょうか(笑)。これも、ある種の方言かもしれませんね。
*ちなみに「お塩、買うたろう」=「お塩を買ってあげよう」になります(笑)。
  

投稿: チャッピー | 2006年10月24日 (火) 21時21分

ぼくてきさん、こんにちは。
学生時代にそんな経緯を持つ方に講義を受けたことがあるなんて、いいですね。
言葉はその場所その場所での空気を含んでいるもので、実に特徴的ですよね。日本国内での方言だけでなく、世界の言葉(外国語)もそういう部分があって、私はそれがとても好きです。
その国の言葉にしかない独特なリズムや表現のフレーズに触れるだけで、実に興味深いなあと思います。

投稿: yumemi | 2006年10月24日 (火) 21時32分

>チャッピーさん

あ!「おはじき」聞かれたんですね。いいなあー。さては(?)チャッピーさんも押尾ファンですね(^^)。

確かに、東京人からは「お塩、買うたろー」っていう発想は出ないです。あはは、たしかに関西弁になってる!
なごやかな演奏会の様子も伝わってきてうれしいです。ありがとうございます(*^^*)

>yumemiさん

本当におもしろい講義で、幸せな経験だったと思います。
専攻にまるで関係ない講義では、筑波大の村松剛先生のも三島由紀夫のエピソードが聞きたくてとったことがあります。当時、三島の文体に心酔していたので。その講義は、村松先生が外見も話し振りも亡霊のようだった・・ということしか覚えてません。当時から体調がお悪かったのかしら。

言葉については、おっしゃる通りですね。音も意味も表現の仕方も、地域や民族性と切り離せないものがあって、それがとても面白いです。

投稿: ぼくてき | 2006年10月25日 (水) 00時25分

子どもは思った事、素直に口に出しちゃいますね(笑)
変な名前だと思ったことは、今までなかったです!
なるほど「お塩、買うたろう」か(笑)
これから聞くたびに笑ってしまうかも(^^;

そうそう!
お台場でやっていたというトライアスロンは
日本選手権です。
私なんかとは比べものにならないほど超高速レースなので
私があんなスピードで走ってるなんて想像しないでくださいね~

投稿: うんぎゃるまつ | 2006年10月25日 (水) 08時40分

方言・・・今は、メディアの発達で、地方にいても方言を忘れてしまうことも多くなってきているかもしれませんね。
私も、関東に住んでいながら、主人も私もうんぎゃるまつさんのお向かいの国の出身ですから、なんだか妙なイントネーションで、家族が会話をします。
でも、面白いのは、うんぎゃるまつさんのお国言葉とやはり似ているということ。語尾が変化していっているのがわかります。
追求していくと奥深くなりそう・・・。

投稿: ハロハロ | 2006年10月25日 (水) 09時17分

>うんぎゃるまつさん

大阪弁検定。
Bの答えとして正しいものを選べ。

A:おしおこうたろかぁ?
B:(          )

1・いえ、まにおうてます。
2・ええ、さいこうです。
3・いえ、これはヨンさまでんがな。

コタファンは2か3を選んで全員落第??

トライアスロン。私の心の目にはうんぎゃるまつさんが風を切って飛んでゆくイメージがしっかりと出来上がっちゃいましたよ~(^^)。

>ハロハロさん

昔に比べると、共通語の影響は大きくなってるでしょうね。でも15年くらい前、東北旅行した時は地元の人同士の話がわからなくて困りました。

だろ>じゃろ>やろ みたいに、語尾が同じならわかりやすいけど、そこが違うような感じで「~なの?」って質問されてるのか「~だよね」なのか「じゃないよね」なのか全くわからず。秋田の友人の通訳が必要でした(笑)。

投稿: ぼくてき | 2006年10月25日 (水) 22時52分

 そうです、そうです。
方言の中の微妙なニュアンスって、共通語で説明しにくいものがあるんです。
やはり、学生時代、私の友人が田舎へ遊びに来たとき、覚えたての方言を調子に乗って使っていて、地元の人を怒らせたことがあります。(笑)

投稿: ハロハロ | 2006年10月27日 (金) 06時24分

大阪弁と言っても、明石家さんまがTVでしゃべっているような大阪弁を使う人は、今の大阪にはいないようです。
大阪へ行って、あれを真似すると笑われますよ、きっと。

ワタクシは、大阪府の南隣の和歌山県人ですが、良く似ている所も多いのですが、和歌山弁は大阪弁とはかなり違ってきます。
こちらでは、「考えときます」は、そのまんま「OKかNOかを考えてみるから少し待って欲しい」という意味だと思うのですが、、、、、?
(実はそうではなく)人を疑う事を知らない、ワタクシの純粋な心がそう思い込んでいるだけかも知れませんが。
京都人は、もっとやんわりとした表現でキツイ事を言いそうですが。

小学生の頃、ジイさんだったかバアさんだったかの法事の後に、兵庫県に住む叔父(めったに会わない人でした)に話しかけられた時の事を思い出しました。
話の内容はよく覚えてません、たぶん
「休みの日には何をしてるの?」
といった程度のたわいない話だったと思いますが、
文末の
「何をしてるの?」
という表現は、ワタクシの地方では、男の人はあまり使わない(「何をしてるん?」とか言います)のです。
この「の?」と「ん?」の違いが、もしかすると兵庫県の方言では全く違う意味の会話なのかと疑ってしまい、何度も聞きなおしてしまって、叔父を困らせたものでした。
「の?」も「ん?」も同じ意味だったんですよねぇ~

全く意味が違う方言に違いない、などと疑ってかかるのも考え物ですよね。

ところで、今、沢田研二が、白髪で腹の出た(役作りの結果なのか?)イナカ町の電器屋のオヤジに扮する、「幸せのスイッチ」という映画が上映されています。
この映画の舞台は、ワタクシが住んでいる町なのですが、登場人物が映画の中で使う方言のイントネーションが、かなり実際の物に近かったために、感心しました。

投稿: ぼち×2 | 2006年10月27日 (金) 23時07分

>ハロハロさん

微妙なところがわからず、呆れさせたり怒らせたり・・。方言も外国語もアブナイのは同じですね(^^)

同じ言葉の意味が違うのも戸惑います。やっぱり東北でのこと。屋台みたいな所で串焼きかなにか食べて「この串どうしよう?」って困ってたら店の人が「あ、そっちに投げといて」って返事。疑問に思いながら、言われた方向に適当に投げたら怒られました。(単に捨てといて、という意味だったらしい)。

>ぼち×2さん

>こちらでは、「考えときます」は、そのまんま「OKかNOかを考えてみるから少し待って欲しい」という意味だと思うのですが

やっぱり。「また今度ね」と同じですね。ワタクシたちのような純~真な心の持ち主の使い方は文字通りってことで・・。

「幸せのスイッチ」の和歌山弁、そんなに上手なんですか。監督が地元なのかな。
沢田研二さんに思い入れはないんですけど、80年代くらいまで「かっこよさ」に誰よりもこだわってた方。そういう方のおとなしい中(老?)年ぶりを見るのはちょっと寂しい気がします。

投稿: ぼくてき | 2006年10月27日 (金) 23時58分

はじめまして、なのか、お久しぶりです、なのか。ここを教えていただいてから、もう9ヶ月くらい経ってるのに忘れてました。ごめんなさい。

前も拝見させていただいたんですが、普通はコメントしないで逃げる(笑)ので、やっぱりはじめましてかな?今回は、つい。いや、徳川先生とかは専攻違うし知らないですけど(なんとなくそんな話がでたのが記憶にあるような、ないような。。)

「あんた、バカね。(低高低)」

がバカ受けしたので(笑)。。。元気しちょいますかね、九州のK君。

投稿: ぼんじょび~な | 2006年10月31日 (火) 06時24分

あら、うれしい驚き。ここでは、はじめまして(笑)SNSの件ではせっかく送っていただいたのに、こちらこそごめんなさい、でした。

昔、K市ぼんじょび~な宅にお邪魔した時はK君も来てましたよね・・。神奈川AちゃんがK君に年賀状毎年出してて「届いてると思うのに全然返事こないんだよ」って嘆いてます。でもまあ、元気しちょるやろ(笑)。

ぼんじょび~なさんが使ってた(過去形?)日本語は、いろんな方言がぐちゃっと混ざってた印象が。あのめちゃくちゃな?日本語(ぼんじょび~な方言)また聞きたいなぁ(^^)←失礼御容赦。

投稿: ぼくてき | 2006年10月31日 (火) 16時46分

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